厳しい経営が続いているJR北海道ですが、この度さらなる支援を北海道から受けることになりました。内容は以下の通り。
厳しい経営が続くJR北海道への支援をめぐり、道は国と共同で新たに車両を買い取り、観光列車にも活用できるよう整備してJRに運行してもらうなどの支援策を講じる方針を固めました。(一部省略)
NHK
北海道と国土交通省の出資で、第三セクターを設立。
この第三セクターが、JR北海道の車両を買い取ることで、事実一部列車の維持費を負担する形です。
鉄道会社が行政機関から資金面で支援を受けるケースはたくさんありますが、鉄道会社が保有する設備や技術を買い取る方法で支援が行われている事例は、日本ではまだまだ少ないです。
上下分離方式について
鉄道会社保有の設備や技術を、別の組織が保有することを「上下分離方式」と言います。
今回のJR北海道の事例は、現時点で保有している設備が全部買い取られてないため、上下分離方式の中でも「一部保有型」に当てはまります。
上下分離方式は、鉄道や道路・空港などを運営するにあたって、上部(運行・運営)と下部(インフラ)の管理先を分けることです。
一般的には、
政府や公営企業・自治体などが土地や施設・設備を保有して、
民間企業や第三セクターが運行・運営します。
今回の場合では、前者が北海道と国土交通省、
後者がJR北海道となります。
上下分離方式のメリット・デメリット
メリットは、費用削減に繋がることです。
JR北海道が自社設備の一部を手放す決定をした背景には、「自社設備を保有するなら、手放して維持費を払う方法で利用するのが安上がりだ」という経営状況があります。
コロナ禍において、経営が苦しくない交通企業などほとんど無に等しいのですから、行政機関が支援に乗り出す姿勢を評価したいです。
デメリットとして、鉄道会社は費用削減できるものの、線路や駅を「行政機関などから借りる」形になるため、使用料を支払う必要があります。
そのため企業の規模や経営状況によっては、上下分離方式を採用せず、設備を自社管理するのが良い場合もあるでしょう。
上下分離方式を採用する鉄道会社(日本)
日本国内ではすでに、青森県の青い森鉄道、群馬県の上信電鉄、富山県の富山ライトレールが、上下分離方式を取り入れて運営されています。
「公的機関が株を保有する場合」は第三セクターですが、
「公的機関が会社資産を保有する場合」は上下分離方式となります。
「上下分離方式」にも経営手段や保有程度によっては様々で、
資産と運営の管理を完全に分けてる→完全分離型
一部保有している(JR北海道のようたな)→一部保有型
公的資金の投資無し→みなし上下分離方式
のように分類されます。
青い森鉄道や富山ライトレールは違いますが、えちぜん鉄道のように経営再建を目的に、行政が運営に介入する事例もあります。
上下分離方式はもっと充実させるべき
「鉄道は線路も駅も車両も全て自分で管理すべきだ」という意見があるものの、ここで一つ考え見て欲しいのは、
同じ交通機関であるバスや飛行機、船の運営会社は、それぞれ経路となる道路・海・空の通行料を払っているのか?ということです。
払っていませんよね。
道路建設・管理費が税金を財源としているので、厳密に言えばバスの運営会社は通行料を一部払っていると言えますが、鉄道会社が経路を維持するよりも費用が少ないのは一目瞭然です。
自動車や飛行機の普及で、特に地方では鉄道が自動車にシェアを完全に取られているような地域もあります。
その背景には、このような不平等にも見える費用負担が少なからずあるのではないかと思います。
日本では、多くの公共交通機関が営利企業によって運営されていますが、公共交通機関は「みんなのもの」であるという側面があることを理解して、平等に公的資金を投入すべきだと私は思います。