【地政学】チョークポイントとは何のこと? 世界の物流を握るポイント
皆さんは、2021年4月に起きた「スエズ運河コンテナ船座礁事故」を覚えていますか?
名前の通り、エジプトにあるスエズ運河内で、一隻のコンテナ船が座礁した事故です。
スエズ運河座礁事故、賠償額など非公表で〝解決〟 検証に課題 -産経新聞
日本国内でも大きく取り上げられた事故ですが、この事故が世界の物流に及ぼした影響は少なくありませんでした。
船が1週間もの間、スエズ運河の水路を塞いだ結果、世界中で海上輸送費が上がり、また多くの資源を輸入で仕入れている日本でも、事故によるあおりを受けました。
では、なぜ「スエズ運河を通れない」ということが世界の物流に影響したのでしょうか。
本記事では、このことを地政学的観点から解説していきます。
地政学について
この記事の本題ではありませんが、まずはこの記事で取り上げる地政学という学問について簡単に解説します。
地政学とは、地理的な要因が政治や経済にどのような影響を与えるか、ということを主に研究する学問のことです。
別の記事で、地政学について詳しく解説しているので、よろしければご覧ください。
スエズ運河には多くの船が集まる
スエズ運河は、地中海とインド洋、もっといえば太平洋を結ぶ運河です。ヨーロッパとアジアを往来する際、この運河が無ければアフリカ大陸を一周回る必要がありますが、スエズ運河が存在することで、アジアーヨーロッパ間の航路が大きく短縮されています。
そのため、船がものすごく大きいということがない限りは、ヨーロッパとアジアを結ぶ多くの船がこのスエズ運河を通行します。
したがって今回のようにスエズ運河で事故が発生して通行不可になったら、アフリカを一回りしなければいけません。この遠回りが燃料費や運賃の値上げ、運行日数の増加につながることは言うまでもありません。

出典:nippon.com
これはパナマ運河も同様です。
パナマ運河が何らかの事件事故で通行不可能になれば、太平洋と大西洋を航海する際、南アメリカのフエゴ島をぐるりと遠回りしなければいけません。
スエズ運河はチョークポイントだ
スエズ運河は、地政学的にチョークポイントと呼ばれています。
チョークポイントとは、船の往来が激しい海峡や運河のことで、「海の要衝」とも呼ばれます。
スエズ運河はもちろんパナマ運河や、ジブラルタル海峡、ホルムズ海峡、ボスポラス海峡、マラッカ海峡なんかも、チョークポイントと言えるでしょう。
先述のように、チョークポイントは多くの船が通過する場所です。
経済的、軍事的な価値があるチョークポイントは、多くの国が喉から手が出るほど欲しい場所。
チョークポイントの特徴を踏まえた上では、イギリスが本国から離れたジブラルタルを今でも領土保持したり、アメリカがパナマ運河の利権に乗っかったこと、スエズ運河を巡って武力衝突が起こった背景を理解できるのはないでしょうか?
ホルムズ海峡もチョークポイントだ
2026年2月28日、アメリカとイスラエルはイランへの攻撃を開始し、イランは最高指導者のハメネイ師を筆頭に多くの政権中枢を失いました。
そのイランはアメリカとイスラエル、それを支持する勢力への報復の一環として、事実上のホルムズ海峡封鎖に踏み切りました。
ホルムズ海峡が封鎖されたことで、石油の輸入は一気に停滞することになりました。
このホルムズ海峡もまた、地政学上のチョークポイントです。

出典:日本経済新聞
湾岸諸国とホルムズ海峡周辺の地図です。ペルシャ湾の北がイランで、地図の右中央に海が急に狭くなっているところがありますね。ここ一体がホルムズ海峡です。
ホルムズ海峡は見ての通りかなり狭く、海流が速く、その上湾岸諸国から輸入された石油タンカーが数多く通ります。そして日本にやってくる石油の大半が、この海峡を通過しています。
ですからここを安全に通れないことは世界にとって大打撃であり、イランはこのチョークポイントを自国の国益のために幾度も利用してきました。ここを封鎖することで、自身の敵対国やその経済に打撃を与えられるからです。
イランのモジタバ師が初の声明「ホルムズ海峡封鎖を継続」 タンカーなどへの攻撃相次ぐ(字幕・13日) -ロイター
最高指導者であるモジタバ・ハメネイ師も、ホルムズ海峡封鎖の続行を声明で発表しています。
数日封鎖されただけでも日本国内のガソリン価格は影響を受けますから、これがさらに長続きすれば街中のガソリン価格はより値上がりする可能性もあります。
実際、2026年3月11,12日ごろからガソリン価格が急激に上昇しています。言うまでもなく、石油調達が停滞していることが理由です。
世界が一体化している現代では、数千キロ離れた場所の出来事が日本の政治、経済に影響を与えます。
地政学は、こうした大きな出来事が自分に影響するかどうかを考える点で必要な分野で、個人にも求められる考え方だと思います。何を持って地政学を学ぶかは非常に難しいところですが、世界地図を眺めるだけでも見えてくる何かがあるかもしれません。
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出典:CNN.co.jp

