ここ数年は、歴代の政権や経済界も目標に掲げてきた「脱デフレ」に向かうような動きが日本経済で起こっています。
「脱デフレ」はつまりインフレの進行を意味しますが、これと同時にさまざまなニュースを通じて、「消費者物価指数」という単語をよく耳にするようになったのではないでしょうか。
私の体感では、日経平均株価や外国為替に準ずると言えるほど、消費者物価指数がニュースで扱われているようですが、これは一体、どのような指数なのか分かりますか?
本記事では、よく耳にする消費者物価指数をわかりやすく説明していきます!
消費者物価指数とは
SMBC日興証券の公式ウェブサイトには、このような記述がありました。
消費者物価指数とは、消費者が購入するモノやサービス等の物価の動きを把握するための統計指標で、総務省から毎月発表されています。指数は全国と東京都区部の2種類あり、東京都区部は速報で集計され当月分が発表されます。すべての商品を総合した「総合指数」のほか、価格変動の大きい生鮮食品を除いた500品目以上の値段を集計して算出されている「生鮮食品を除く総合指数」も発表されます。
消費者物価指数の変化をもって物価の変動を見ることができますので、消費者物価指数は、国民の生活水準を示す指標のひとつになっています。
CPI(Consumer Price Index)と略されることもあります。出典:SMBC日興証券
まとめると次のような内容になります。
①消費者の購入品の物価変動を把握する指標。
②この指数から物価変動が分かるので生活水準を示す指標になる。
出典:Bloomberg
消費者物価指数はインフレ率を示す
物価上昇の局面に入るにつれて、消費者物価指数に関心が高まっていったのは、この消費者物価指数がインフレ率を表す指標だからです。
インフレーションとは、物やサービスの物価が上がることを言い、インフレ率は上がる比率を表した指標です。勘の鋭い方はお分かりでしょうが、つまりインフレ率と消費者物価指数は、概ねイコールの関係が成り立つということです。
消費者物価指数の分類
日本で消費者物価指数は、地域そして物価指数の計算に含める商品やサービスの2つの要素に応じて、算出する指数が分かれています。
①地域ごとに指数を区別
第一に地域では、「東京都区部」「全国」の2つの物価指数が毎月算出されます。
東京と全国では、まるで算出対象の規模と人口で両者は大きく異なるものの、このように二手に分かれて算出されているのは、都心と全国で生活コストや収入が大きく異なるからです。
例えば食品価格は近年、東京と地方でそれほど大差が無いものの、住居費は圧倒的に東京が高く、一方でエネルギー費は公共交通機関が東京ほど充実していない全国で高くなる傾向にあります。
以下の記事内でも指摘されているように「暮らしぶり」の違いが、地域ごとに指数を二分する理由の一つです。
②商品ごとに指数を区別
また算出に含める商品やサービスでは、すべての商品を算出対象とする「総合指数」、価格変動の大きい商品を除いた500品目を算出対象とする「生鮮食品を除く総合指数」の2つに分かれています。
消費者物価指数は毎月公表されますが、生鮮食品の価格は季節やその月ごとに需給バランス以外の理由で変動する例が数多くあります。
例えば、猛暑で野菜が不作になり価格が上昇しても、これを指数に反映させるというのは、本来の消費者物価指数の意義に反するように思えます。
そこで、不可抗力による価格変動が起きやすい商品を含める指数と含めない指数を両方採用することで、純粋に経済だけの要因で変動する指数も確認できます。
消費者物価指数が上がるとどうなるのか
それではタイトルにある、もう一つのテーマに入っていきましょう。
消費者物価指数、つまりインフレ率が上がるとどうなるのでしょうか。
消費者物価指数の上昇が招く結果を、家計と金融政策の二つの側面から見ていきましょう。
①家計
消費者物価指数の上昇は、短期的に家計に悪影響を与えます。
収入が変わっていないことを前提にすると、その中で物価の上昇に耐える必要があるため、生活に必要なモノやサービスを支払った後に手元に残るお金は、インフレが起こるほど少なくなります。
多くの場合は、物価上昇とともに賃金も上昇するのが長期的な結果ですが、短期的には家計が以前より苦しくなると言えます。
②金融政策
金融政策では、物価が上昇するほど金融引き締めを検討し始める傾向にあります。
金融引き締めとは、インフレという経済が過熱気味な状況を抑制するために、市場の投資や消費が縮小されるように誘導する金融政策のことです。
具体的な政策として、中央銀行が保有する資産の圧縮、通貨供給量の減少(市中の通貨を減らす→通貨の価値を高める→デフレ傾向に)、政策金利の上昇、預金準備率の操作といったことが挙げられます。